薬局を開設する時、会社にします?個人にします?
調剤薬局を開設する時、個人の事業として始めることもできますが、会社を設立して始めることもできます。
では、どちらがいいのでしょうか?
個人事業主とは
個人で事業として調剤薬局を開く場合は、個人事業主として事業を始めることになります。
個人事業主とは、その名の通り、個人で何か事業を始めて行っていく「継続・反復して事業を行っている人」のことです。
会社と雇用契約を結んで(勤務して)いる会社員に対して、個人で事業を行うために税務署などに開業届を提出している人なので「個人事業主」といいます。
事業主1人のみで事業を行うこともありますし、家族や他人を従業員として雇い、複数人で事業を行っている場合もあります。
つまり、法人として事業を行っているのではない場合は、すべて個人事業主ということになります。
例えば、家族経営の飲食店や八百屋などの店舗を行っている人、行政書士や税理士などの士業の人、イラストレーターやYoutuberなどがあります。
会社とは
事業を行うために法人登記した団体が会社です。
株式会社とか合同会社などがそうですね。
会社を設立するためには、定められた方法で設立登記を行い、法人として登記されたものが会社となります。
多くの場合、個人事業主が行う事業よりも規模の大きい(人的・資本的)ものになります。
登記を行うため、開業届を出せばいいだけの個人事業主とは違い、決められた書類を用意したり資本を用意したりと、設立までに手間や時間がかかるのが普通です。
薬局開設における開設者の要件
では、調剤薬局を開設する場合の開設者の要件は何かというと。
令和5年の薬局業務運営ガイドラインによると
- 開設者(法人の場合は代表者)は薬剤師であることが望ましいとされたのは、薬局の地域保健医療への貢献を促すには、医療法の規定により医療の担い手とされた薬剤師(医療法第一条の四)が開設者であることが望ましいこと、開設者が非薬剤師の場合には、行政や地域薬剤師会等が行う研修会や医薬分業促進のための諸活動への参加が一般的に消極的であること、諸外国においても薬局の開設者を薬剤師に限定している国が多いこと等の事情が考慮されたからである。
- 薬剤師でない者から、薬局の開設の許可又は更新の申請が行われた場合には、開設者が薬剤師でない理由、将来薬剤師に変更する計画の有無等について資すとともに、行政や地域の薬剤師会等が実施する研修会、休日、夜間の受入体制の整備等の地域活動に参加、協力する旨の約束を何らかの形で取りつける等の指導をされたい。
- 開設者が薬剤師でないことのみを理由に薬局開設の許可及び更新をしないことは現行法上認められないので留意されたい。
ということですし、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)の第7条で「薬局の開設者が薬剤師の場合」と「薬局の開設者が薬剤師では無い場合」に分けて定義されているので、欠格事由に該当しなければ誰でもいいって感じです。
実際、近所の薬局には、個人で行っている薬局もあれば、株式会社の薬局もあると思います。
薬局開設には、個人・法人のどちらがいいか?
では、薬局開設の場合、どっちがいいのでしょうか?
実はどちらが適しているという明確な基準は無くて、やりたいようにやればいいってことになります。
個人事業主の場合
法人の方が社会的な信用は高いので、銀行取引や融資などの面では個人事業主は不利かもしれません。
ですが、薬局開設に限らず、個人事業主の場合は、開業届だけで済むという簡便さがメリットです。
逆に、個人がやっているものなので、公私の混同が起きやすいことから、お金の管理や資産の管理には注意や工夫が必要です。
また、家族を従業員として働かせていた場合に、給与の支払に一定の制限があります。さらに、個人事業主に対しても、累進課税があるため、高額所得者となると税金が高くなる可能性があります。
多店舗展開や従業員の採用のように規模を大きくする場合には、個人事業主は不利ですね。
会社の場合
会社の場合は、会社設立に費用と手間がかかるので、その分大変ですが、そうした手間をかけた分、社会的信用度が上がります。
ですが、運営面では、取締役会や株主総会、役員の登記など個人事業主では必要のない事柄も多いので、運営コストは高くなります。
例えば、運営コストでは、赤字であっても毎年数万円の税金が発生しますし、定期的に取締役の登記が必要になります。
また、会社組織の方がチェーン展開など規模を大きくしたい場合には向いています。
じゃあ、どっち?
薬局開設の場合、多店舗展開や従業員の雇用という面では、会社にしたほうがメリットが高いでしょう。
しかし、家族経営で患者への細やかな対応をしたいのであれば、個人事業主がいいかもしれません。(法人だと細やかな対応が出来ないということではありません)
税金面で考えると、収入が増えていくことが予想できるのであれば、法人の方が有利です。
まとめ
これは個人的な意見ですが。
薬局開設でも複数人で経営に当たるような場合には、会社組織にしたほうがいいと思います。
個人事業主というのは、その事業主が全責任を負う代わりに何でも思い通りにやっていい(法に触れなければ)ということなので、いわゆる役員のようなものはありません。
もし、役員という役割が必要なのであれば、法人にすべきだと考えます。
もし、個人で始めて、大きくなってきたら法人にと思っているのであれば、最初から法人にしたほうがいいです。
なぜなら、法人に切り替えるときには、全くの別人が薬局をやると見なされるので、開設許可を最初からやり直さなければならないからです。

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